特集記事 セカンドキャリアを考える

セカンドキャリアを考える

“駐在奥様" その響きは一見華々しくとられがちですが、実は悩みも多いはず。慣れない海外での生活、育児、生きがいの見つけ方、将来のキャリアの心配など…。タイ駐在帯同という「期間限定の非日常」が終わり、日本に帰国したら仕事をするのか? どんな仕事に就けるのか。今回は、まさに日本への本帰国が決まり、今後について迷っている駐在奥様のYuさんと、日本での転職事情にも明るいアデコタイランドのキャリアコンサルタント、Kanaさんの対談をお届けます。

Yu (駐在奥様)

日本では通信系の会社と食品メーカーで営業事務として合計10年間勤務。社会人生活10年というキリも良く、海外生活という新しい経験をしたいと思い、結婚を機に喜んでタイへの帯同を決める。楽観的な性格のためタイ在住中は国内・海外旅行を楽しみまくっていた(一応、ふんわりとタイ語が話せるレベルには語学学校に通っていた)。しかし、本帰国が見えてきたため「このまま何もなしえず帰国していいのかな」と考えるこの頃

Kana

アデコタイランド キャリアコンサルタント

新卒で銀行に入社し法人営業を行う。人材業界に興味がありAdeccoJapanへ転職、人材紹介業に携わる。2020年末に来タイし、AdeccoThailandに移籍。中小企業~大手上場企業と幅広い企業を担当し、人材の提案を行う。求職者に対しては希望条件、将来性を見据えた転職をサポート。超多忙だった銀行員生活を終えてからは、海外旅行にはまり、訪れた国は13カ国。タイは過去に4回訪れた事があり、何かとスムーズに生活を開始。タイの習慣やリアルな生活に触れたく、ローカルバスや屋台での食事を楽しむ日々。国に応じて人材業界のマーケットに違いがある中、日本とタイでの経験を活かし、少しでも多くのニーズに応えていきたい

まずは自己紹介

Yu(以下Y): 初めまして。タイでYouTube(タイ駐在妻自分磨き~TAIKKO~)をしているYuと申します。夫の転勤で3年前にタイに来ましたが、帰任が決まり来月には日本へ帰国予定、帰国後の仕事について悩んでいます。

Kana(以下K): 初めまして。アデコタイランドのKanaです。つい最近まで日本のアデコに勤務しており、昨年タイに来ました。タイの駐在奥様からYuさんと同じ悩みの声をよく聞きます。今日は駐在奥様の皆さんが日本に帰国した後、どう仕事と関わっているのか? お話できたらと思います。Yuさんはタイに来られる前、食品メーカで営業事務をされていたんですよね。実際お仕事をしていない時間をタイで過ごしてみてどうですか? 以前のようにガッチリ働きたいのか、それともプライベートとのバランスを見ながら程よく働きたいのか?

Y: そこまでガッツリじゃなくて良いかな。でも何かしら働きたいとは思っています。

K: プライベートの時間も大事にしつつ少し働けたら、という感じですね。

Y: はい。ただ仕事をしていないブランク期間があるので、そのあたりが心配です。後はもう一度仕事に復帰できるのか? という不安もあります。

K: 確かにブランクがあると心配になりますよね。そもそもなんですけど、Yuさんが働こうと思う目的は何ですか? 私の場合は、これまで自分で稼いだお金で好きな海外旅行に行きまくった経験があって、それが自分にとって幸せだったんです。今後も何かしらそう思える機会が欲しいと思って働いています。後は、毎日が家庭だけになると、私はそこだけに執着・依存してしまう性格なので、外に自分のコミュニティを持っていた方がバランスがとれるかなと思っています。その方が夫と喧嘩をしてもストレスが分散されるような気がして(笑)。

Y: 私の場合は、リアルな所、生活は旦那の収入を軸に、と夫婦で考えているのですが、プラスアルファで自分のお金があればいいなと思うし、タイでYouTubeをしていて「自分で何かをする」楽しさも実感したからだと思います。でもブランクがある女性って需要あるんでしょうか

YouTube「タイ駐在妻自分磨き~TAIKKO~」

2020年9月1日に駐妻YouTuberとして1期生3人組にて発足。孤独な駐妻が一人でも少なくなればとの想いで始めたが、自身らの発信から、在タイ・プレ在タイの方々に幅広く役に立って行きたいと考えている

ブランクがある人は再就職できるのか?

K: Yuさんの場合、ブランクは理由があっての事なので仕方ないですよね。日本にいて単純に仕事をしたくないから無職でいた方のブランクとは違う。そこをしっかり理解して受け入れてくれる会社はありますよ。ただ、正社員や派遣、パートなどにこだわらず、間口は広げた方が良いと思います。その方がYuさんにとって最終的に一番ベストな働き方を選べますし。

Y: はい。これまでは正社員としてしか働いたことがなかったけど、派遣なども含め間口を広げたほうがいいですね。

K: 駐在奥様に限らず、日本にいても子育てや親の介護で仕事にブランクがある方はたくさんいますが、割と多いのがまず派遣で仕事を再開してみる方です。途中で正社員になる方もいれば、引き続き派遣を希望する方もいます。

Y: そうなんですね。ブランク後だと仕事を再開する事にちょっと抵抗感というか不安があるのですが、皆さんどうですか?

K: その環境に入ればスッと仕事に向かえるのは、男性より女性の方が多いです。

Y: そんなもんなんですね。正社員だと残業も避けられないときもあるでしょうし、まずは派遣やフリーランスから始めるのもありですね。もちろん正社員で自分にマッチするものがあれば、それはそれでチャレンジしてみたいな!

プチ情報

正社員で転職できないから派遣へ、という考え方は古い!?

派遣で働いている方は「プライベートとの両立がしやすい」「仕事が終わる時間が決まっているから子育てしやすい」など、派遣という働き方を自ら選んでいる方が圧倒的に多い。また保険も派遣会社(雇用元)で加入できます。家庭がある、子育てがある、という方にとってバランス良く働ける環境といえます

フリーランスとして自宅でライターやデータ入力をしている子育て世代の女性が増加!

例) お店や商品の紹介記事のお仕事をしている40代女性

月5~9万円の収入

例) 翻訳やプログラミングなど専門職をしている30代女性

月10万円以上の収入

女性の再就職はどう見られる?

Y: 家庭があったり、子供がいる女性でも採用してもらえる? 日本はそれが心配です。

K: その企業の希望や状況にもよりますが、意外と結婚して子育てをある程度し終えた女性の方が、会社への定着率が良いとの理由で、あえてそのような女性を希望する企業も実際にありますよ。特にバックオフィス系の職種はそのような意見も多いです。

Y: 転職の経験が少ないので、そのような意見があるとは知りませんでした。

K: 実際、日本の労働人口数の42%は女性なんですよ。女性の雇用を進めたい企業は増えています。

Y: おぉ、女性が42%とは驚きました! 思ったより高かったです。働こう、という気持ちが増してきました。

どんな仕事をしよう?

Y: とはいえ、どんな仕事ができるのか。私は営業事務の経験しかなく、専門的な資格があるわけでもないです。周りには看護師や保育士の資格保持者もいますが、さて自分はどうしようかな…。

K: 営業事務の経験といっても人によって携わっている仕事の範囲はそれぞれだと思います。まずはYuさんがどのような営業事務をしていたか、棚卸しをする事をおすすめします。

Y: 棚卸し?

K: 携わった業務の深堀りです。例えば、営業部と深く関わる事務を経験していたのであれば、今度は自分が営業職を希望する選択もあります。他には、貿易事務の経験があれば輸出入があるような会社をご紹介できるし、経理に近いような売上・コスト管理をしていたなら、経理補佐の仕事も紹介できます。事務といっても幅広いので、少しでも自分の可能性を広げながら、それをエージェントに伝えてもらった方が良いですね。

Y: なるほど。もう昔の事でぱっと出てこないので、事前に思い出してしっかり準備した方が良いですね。一度棚卸ししてみようと思います。ちなみに給与感についても教えてください。

年収の目安情報

一般事務の場合: 230~450万円
経理や人事、貿易事務などの専門スキルを追加した場合: 目安300~550万円
上記に加えマネジメント職の場合: 目安500~650万円
経理スペシャリスト+税理士・会計士・社労士などの資格があればそれ以上の年収

年齢はあまり関係ない?

Y: あと不安なのが年齢です。若いほうが有利というイメージ。実際30代はどうですか?

K: 職種にもよりますね。ただ必要以上にマイナスに感じることはないと思います。

Y: 本当ですか?!

K: 30代は転職市場ではまだ若い方。最近は40代の転職も増えています。実際に50代・60代の人材活用も日本は必要になっているので、昔みたいに新卒でカバーするというより、中途社員も活用して企業のノウハウを高めたり、社内バランスをとろうとする会社が増えてきています。

年齢関係なく新しい業界や職種にキャリアチェンジはできる?

Y: 例えば30代半ばを超え、自分の経験とは全く違う業界や職種へのキャリアチェンジはできますか?

K: 私の感覚でいうと、5年前にそのようなニーズの求職者が来られたら、内心「そんな事言われたら困ります(汗)」と感じていました。なぜなら一番転職しやすい法則は「経験×専門分野」だからです。経理の経験がある方は経理関係、人事の経験がある方は人事のように。

Y: 法則ね。

K: ただ、今はYouTubeで億を稼ぐ人もいる時代。自分の発想一つでキャリアを作れる時代になりつつあります。このようなキャリアアドバイスは人材紹介業の教科書にはのっていないので、私にとっても未知の提案ですが、この時代だからこその法則にあてはまらないチャレンジをしても良いと思います。

Y: では、希望ベースでエージェントに相談しても良いと思いますか?

K: 良いと思います。ただ、これがしたいと希望ばかり出すのではなく、なぜそれがしたいのかや、自分が経験したキャリアや自分の性格が具体的にどう活かせるのか、その結びつきを自分で深堀りした上でしっかりアピールできないと、相手には伝わらないと思います。そういう意味でも棚卸しは必須ですね。

転職成功者の平均年齢

タイにいる間にできることはあるのか?

Y: 自分を振り返り整理をする事が大事だと理解できました。その他、タイにいる間にしておいた方が良いことはありますか? 資格をとった方がいいとか。

K: 資格や語学証明はあった方が良いですね。資格があるから仕事が完璧にできる、とは誰も思わないけど、向上心や努力心が見えるので、そういう意味であった方がいいと思います。

Y: タイ語検定とかも履歴書などに書いた方が良いのかな?

K: 書いた方が良いです。タイ語を使わない仕事だとしても、Yuさんがその環境で必要な語学を勉強していたということがプラスに映ると思います。

Y: お、書きます(笑)。その他、プラスに働くものはありますか?

K: 何の仕事を目指すかによりますが、経理事務に挑戦したいなら簿記3級とか、マルチに営業事務に活かしたいならExcelなどOAスキルの向上とかが良いでしょうね。

Y: 間口を広げると、実はフリーランスライターにも興味があるんです。仕事としては経験がないので、アピールしようにも難しいんですよね。そのような職種は資格も思いつかないし。

K: タイで活動していた内容を成果物として提出しても良いと思います。ライターや商品企画、広告の仕事をされている方は、自作の資料や映像などを面接に持参しています。資格と一緒で、形として出せるものはやっぱり強い。

Y: YouTube、活用できるかなぁ(笑)。

タイにすんでいたことがプラスになる仕事はあるか?

Y: もう一つ気になることがあって、タイに住んでいたことがプラスに働く仕事ってありますか?

K: ただ住んでいただけでは、直接プラスになることは残念ながらありません。ただ、タイに住んでいたというより、タイで何をしたのか? 何を感じたのか? が大事だと思います。

Y: ん?

K: 例えば、外国人がいる職場なら、外国人の価値観や人間性を理解している点を面接でアピールできるかもしれないし、タイに工場や営業所がある会社であれば、タイの文化や地理を理解していることが面接でプラスに働く事もあります。

Y: 企業に応じて、そのあたりは面接でプラスに働く可能性もあるんですね。納得しました。

面接について心配していること

Y: 具体的にイメージが湧いてきました。面接に進んだ場合の質問もして良いですか? 駐在妻あるあるだと思うのですが、面接で「旦那さんの転勤がまたあるのでは?」と聞かれたらどうしたら良いですか?

K: 勿論、嘘はダメですが、今の状況を伝えると共に自分の見解や意見をそえてカバーしたら良いと思います。例えば「日本に帰任したばかりで、今後は日本サイドでの仕事を任されていると聞いていますので、また海外にいく事はないと理解しています。」とか、「家族とも話し合い、夫婦ともに今後は日本で生活をしたいと思っています。勿論、またすぐ海外という可能性があれば私も仕事について悩むところですが、そのような事もないと理解しており、私も日本で働きたいという気持ちがあるので、こうして面接にも来させて頂きました」とか。物は言いようですけどね(笑)。

Y: なるほどー! 使わせて頂きます。

履歴書添削アドバイス

K: もしよければYuさんの経歴書の添削をお手伝いしましょうか。

Y: ぜひお願いしたいです!

K: 職歴は新卒からすべて記載していただき、経験も営業事務でまとめるのではなく、しっかり棚卸ししたうえで記載してくださいね。また、取材協力資格や語学、仕事以外でやってきたことは備考欄に書いてください。

Y: 書類添削もしていただけるのは非常にありがたいです。

おまけ

コロナ禍における日本の転職市場

一時的に求人は全体的に減っています。ただ、ここ中長期的に見ると日本も転職はしやすい環境になっています

平均有効求人倍率の推移

参考: 厚生労働省 | 一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)について

リーマンショック後の最悪な時が0.4、バブルピークの時代1.5、2019年1.6、2020年はコロナ禍で落ち込みましたが、中でも落ち込みが少ない業界はIT業界とライフサイエンス業界(医療、製薬など)です。一方で、営業やバックオフィス系、製造工程に関わる求人は減少もしくは一旦保留状態というのが多いです

まとめ

Y: 今日はありがとうございました。このような機会がないとなかなか考えないものですね。

K: 転職活動をしたことがない方は、どう取り組んでいいか分からないですよね。そもそもタイにいると日本の転職情報もそんなに入ってこないですし。

Y: そうなんですよね。主人の帰任が決まって初めて少し考え始めるって感じでした。

K: 転職は中長期的な視点で取り組む必要があります。求人情報を見る事から始める方も多いと思いますが、意外と自分の経験を棚卸しする事が、後々転職活動を成功させる秘訣の1つなんです。後は自分の中で優先順位を決めること。お金、時間、プライべートが第一で仕事が第二の位置づけなのか、などなど。

Y: 棚卸しと優先順位設定の2つですね!

K: その2つを自分で整理するって結構大変だと思うので、気軽に弊社のような転職エージェントに相談してもらえればと思います。誰かとアウトプットしながらの方が整理しやすいと思いますよ。日本のアデコも正社員/契約社員/派遣のご紹介をしておりますので、良かったら活用してみてください。

取材協力

アデコについて

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by WOM 編集部

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