コラム タイ野菜でべジフルライフ 第32回 ローゼル(グラジアップ・デーン)

タイ野菜でべジフルライフ

第32回 ローゼル(グラジアップ・デーン)

ローゼル
Roselle
กระเจียบเเดง(グラジアップ・デーン)

今年のタイは、暑季があまり暑くないまま雨季に突入し、ついに洪水が深刻な状況となってしまいました。この原稿が読まれる頃には、山場を越えたところだとは思いますが、被害に遭われた皆様には心からお見舞い申し上げます。洪水の心配がなくなっても、農作物への影響を思うと、まだまだ先が心配です。農家の苦労も大変なものでしょうし、野菜・果物の値段が軒並み上がっておりますので、外食産業にも影響があるでしょうし、我々のお財布にも響いてきそうです。ただ、これまでもタイ人は、何度も洪水を経験しながらたくましく生きてきました。それを支える大地のパワーと暮らしの知恵に期待したいと思います。

 

いつも繰り返し言うことですが、タイ人は、1つの植物があれば、実がおいしいからと実だけを食べるのではなく、根や茎、葉、花、種子までも毒さえなければなんでも食べようとするかのようです。今回紹介するローゼルも、新芽や若葉が市場に出回っています。日本でもそういう時代があったでしょうが、豊かになっておいしいもの、きれいなものばかりが重宝されるようになり、そうでないものは貧しさの象徴であるかのように敬遠されて消えてしまいました。もっとも日本食レストランに並ぶタイの若者たちも、やがて伝統的なタイ料理や食べ方を忘れてしまうのではとちょっと心配です。それがタイのたくましさを失うことにもなるのではないかと、日本食ブームをうれしく思う反面、不安でもあるこの頃です。

 

南国を象徴する花、ハイビスカスと同じアオイ科です。花は、ハイビスカスというより同じアオイ科のオクラの花にそっくりです。タイ語は「デーン」を省略することがあり、オクラ(グラジアップ)と紛らわしくなります。ハイビスカスティーとして売られている乾燥品やティーパックは、このローゼルです。見た目が花びらのようですが、萼(ガク)と苞(ホウ)と呼ばれる部分です。写真のように深紅の花のようにも果実のようにも見えます。

 

クレオパトラが愛飲していたとか、タイの王室が国賓をもてなす時に供していると言われています。生は、雨季の終わり頃から乾季の初めに出回ります。料理には、真ん中の種子を取って利用します。お茶やジュースは、ポットに数個入れて熱湯を注ぐだけでできます。お好みで砂糖や蜂蜜、マナオをどうぞ。さらにジャムやゼリー、サラダやソース、塩漬け、酒漬け、酢漬け、砂糖漬けなどにも。砂糖漬けや塩漬けの市販品もあります。

 

色から想像できるように抗酸化ポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれています。フルーツのようなほのかに感じる酸味は、ビタミンC、クエン酸、酒石酸などで、疲労回復、美肌効果が期待されます。カリウムも多くむくみや二日酔いにも効果があります。美しい紅色を眺めながらクレオパトラのような贅沢な気分にひたってみてください。

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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