コラム お金の知識を高めるコラム Vol.103 「責任ある積極財政」への金融市場の評価や如何に?

お金の知識を高めるコラム

Vol.103 「責任ある積極財政」への金融市場の評価や如何に?

高市政権は主要政策として「責任ある積極財政」を掲げています。これは、経済を成長させることを優先し、財政規律を緩和して、積極的な先行投資を行っていこうとする側面があります。しかし、政府といえども財政規律を軽視しすぎると、金融市場から厳しい評価を受けることはありえます。財政の安定性を欠く政策が市場から厳しいしっぺ返しを受けた例として、上げられるのが、「トラスショック」です。

2022年9月に英国のトラス首相は大規模な減税策「ミニ・バジェット」を発表しました。しかし、所得税の基本税率引き下げ、最高税率撤廃、法人税率引き上げの凍結など、巨額の減税案に対しては、財源の裏付けが弱いとの厳しい評価がされました。そのため、この積極財政策は、英国の財政悪化懸念を増幅することになりました。投資家による英国債の投げ売りをきっかけに英国債・英ポンド株式が一斉に売りを浴びせられる「トリプル安」に陥りました。この金融市場の混乱を「トラスショック」と呼びます。結局、イングランド銀行による必死の緊急介入により事態は沈静化しましたが、トラス首相はこの政策の撤回と就任からわずか44日での首相退任に追い込まれました。

国債の暴落は、日本では起こり得ないと言われてきました。理由としては、日本の経常収支は大幅な黒字が続き、対外純資産が巨額であることや、日本国債の海外投資家による保有割合は約6.5%と低いことなどが挙げられます。しかし、日本の機関投資家を中心とした日本国債の買い手が、それを投げ売ることはないという思い込みです。

高市首相は、1月20日、政権基盤を固め、歳出拡大や減税を柱とする政策への支持を問うために、衆議院の解散総選挙を決断しました。それを受け、金融市場では、満期までの期間の長い超長期日本国債が急落、一時パニック的な売りも見られました。40年日本国債利回りは4%を超えて過去最高を記録、30年債利回りも3.68%まで急上昇しました。起こりえないとされてきた日本国債の暴落は起こってしまったのです。

今回の総選挙では、いずれの政党の主張も「積極財政」に舵を切っています。財政政策の出口は、金融市場にどのような影響を及ぼすのか、しっかりと見極める必要が出てくるでしょう。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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