このコラムでは、繰り返し書いてきたことですが、為替市場でドル円相場の「円安」圧力が、またぞろ強くなってきています。
米FRBは今年前半こそ、インフレ圧力が緩和しないことへの警戒感から政策金利を維持しましたが、後半に3回の利下げを実施しました。一方の日本銀行は今年初めに利上げを行い、日米の金利差は縮小する傾向にあります。金利差に注目する市場参加者は多く、実際にそれを理由として為替の予想が語られることも多いのですが、現実はそうなっていないことがココからわかります。
また、今年初めに発足したトランプ政権は、関税引き上げや減税政策を採ったため、米国経済の先行きへの疑念が強まりました。この結果、米ドルは年初来で見れば主要通貨に対して弱くなっています。そんな中での「円安」は、如何に円安圧力が強いかを物語っています。
理由は、やはり日本の構造的な問題にあると言わざるを得ないでしょう。一つは、インフレに弱い日本経済という側面です。資源価格の高騰や、ITなどのサービスへの高い依存度が、貿易赤字やデジタル赤字として貿易収支の悪化に繋がっている事が挙げられます。また、多くの製造業が拠点を海外に移し、製造業で空洞化が進んだため、円安が進行しても輸出が増えて円が買い戻されるメカニズムが弱まっていることもあるでしょう。そして、なによりITなどの新規分野での競争力に乏しいという創造力の不足も日本円への評価を低下させているのではないでしょうか?
日本銀行は12月中旬に予定されている政策決定会合で、2025年1月以来の政策金利の引き上げが確実視されています。しかし、その利上げの理由の一つには、「円安阻止」「インフレ阻止」の狙いも挙げられています。利上げは円高や資金循環の鈍化を通じてインフレを抑制する効果は期待されますが、日本経済が成長力を高めるために必要な設備投資にとってはマイナスとなります。足元では第3四半期の実質GDPが年率換算で速報値の▲1. 8%減から▲2. 3%減に下方修正され、日本経済が、まだ万全な状態にあるとは言えない状況で、利上げカードを切らなければならないところに追い込まれているとも言えるでしょう。経済政策を金融緩和に依存しすぎた「ツケ」はこんなところにまで及んでしまっていることに危機感を持たなければならないと、2026年を迎える節目に、改めて感じるところです。