4月2日、トランプ米大統領は、全ての国・地域を対象に基本税率10%に加え、約60カ国・地域を対象に上乗せ税率を適用する「相互関税」を賦課することを発表しました。欧州連合には20%、日本には24%、アジア諸国にも大幅な上乗せ関税が適用され、カンボジアは49%、ベトナムは46%が輸入関税として課されます。
これにより、米国の関税率は26%程度になる見込みです。約100年ぶりの高水準に引き上げられます。主要同盟国は米国に関税措置の軽減を請い、トランプ大統領に交渉の機会を求めています。このため、トランプ大統領は「相互関税」の適用を90日間停止することを発表しましたが、何処を落とし所に『ディール』を取りまとめるつもりなのかは見えていません。各国が、交渉により対米貿易障壁を削減することは交渉の一つのカードでしょうが、米国の貿易赤字が実際に解消するには、時間も掛かるうえに困難を極めるでしょう。
関税措置に屈しない姿勢を示す国もあります。李強・中国首相は、「外的ショックに十分な対抗手段」があると自負し、中国は「最後まで闘う」と表明して米側の圧力に屈しない姿勢を見せました。米中という二大経済大国間での貿易戦争は長期化する可能性が高まっています。カナダも米国の25%の自動車追加関税に対抗して、米国製自動車に同率の輸入関税を課す報復措置に踏み切り、欧州ではフランスとドイツが相互関税に対して強硬な対応を議論しているようです。
痛みを受けるのはアメリカの貿易相手国だけではありません。トランプ大統領が課した関税の影響は米国にも跳ね返ってきます。関税賦課を経て本当に米国の製造業が復活するのかは道筋が見えません。関税によって消費者物価が上昇するため、消費は後退するとの予想が大半です。投資銀行の多くは、2025年、米国経済がリセッションに陥るとの予想に変更しました。
トランプ大統領は相互関税にとどまらない追加関税も予定しているといわれます。トランプ「関税」発動により世界の貿易秩序は大幅に塗り替えられました。物価の上昇、設備投資計画の抑制、雇用の見直し、サプライチェーンの再構築など、世界経済には、多大な影響が及ぶことが懸念されます。想定していなかった大規模で大幅な関税賦課によって、世界経済の成長はリスクにさらされようとしています。