コラム お金の知識を高めるコラム Vol.13 具体的に分散投資を始めてみましょう

お金の知識を高めるコラム

Vol.13 具体的に分散投資を始めてみましょう

 分散投資の重要性を理解いただいたところで、では、実際に投資を始めることをシミュレーションしてみましょう。投資対象となる金融資産は、株、債券、他には不動産やコモディティ (貴金属や穀物、エネルギーなど) があります (株や債券の解説は過去のコラムを再読ください) 。

 

 しかし、一口に株や債券といっても、発行している会社や地域・国によってリスクやリターン (利回り) が異なります。例えば、債券といっても、先進国債券 (アメリカや欧州など) と新興国債券 (アジアの国など) ではリスク・リターンが異なるのです。

 

 株式は債券よりもリスクとリターンが高い投資対象です。債券と比べるとリスクが高く、値動きも大きいのが特徴です。また新興国株式は、一般的に、先進国株式よりも値動きが大きいです。新興国の市場が政策や市場環境で一変する可能性もある上、政治的なリスクもあり、また相対的に小さい規模であることも変動幅が大きい理由です。しかし、アジアの国は成長率が、相対的に高いことを背景に、リーマンショック以降の株式の上昇率は、高くなっています。従って、株や債券への分散に加えて、先進国と新興国に分け、特にアジアを含めることも意識して分散投資することで、リスクはより小さく、期待リターンは高まるように投資していくとよいでしょう。

 

 株式や債券を買うのは、実は少し骨が折れます。何を買ったらいいか、銘柄が多すぎるのです。そんな方には、ファンド (投資信託) をお勧めします。ファンドは、プロのファンドマネージャーにお金を預けて、先進国の株式や債券といった括りで、特定の種類のものだけに投資し、そのリターンを分配する仕組みです。もちろん、ファンドマネージャーに払う報酬はかかりますが、それも、あらかじめ何%と決められています。従って、先進国株式、アジア株式、先進国債券、アジア債券に集中して投資するファンドに、分散投資をすれば、これで初期のポートフォリオは概ね出来上がります。

 

 異なる価格の動きを性格上持つものを組み合わせることは、変動 (特に価格のダウンサイド) に対する耐性を高めます。実は、不動産も、株や債券とは異なる動きをする投資対象です。不動産は、世界の景気循環にはある程度リンクしますし、循環的な動きはありますが、不動産市場の好不況によりリスク・リターンが変動します。質の高い不動産は、長期的には安定的に上昇傾向にあります。更に、貴金属やエネルギー、農産物といったコモディティも、それらへの需給によって価格変動が起こります。投資に慣れてきたら、こういった投資対象も検討し、分散投資の対象に入れていくことも、視野に入れてください。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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