第32回 「微笑みの国」では先に微笑もう!
日本人はとかく、「日本すごい!」「日本人偉い!」が好きである。愛国心があるのは良い事だし、母国を褒められるのは嬉しいものだ。確かにおもてなし、という言葉の通り、丁寧な接客や対応は日本独特の誇れるものなのかもしれない…。が、その過剰なまでのサービスやマニュアルに従う姿勢は本当の意味での、おもてなしなのだろうか?
日本には「お客様は神様である」という、その本意が歪められて伝わり、広まってしまった言葉がある。元浪曲師であり、演歌歌手の三波春夫が1961年ごろに、宮尾たか志との対談の間で生まれた言葉だ。本来の意味とは、「お客様を神様と捉える、そうすることで芸に磨きをかけ、心の雑念を払い最高の芸を見せることができる」というもの。決して無条件にお客様を崇め奉るという意味で用いてはいないのだ。ところが、言葉だけが一人歩きし、今では「お客様」はサービスを受ける事はもはや当たり前となった。
接客に対して、日本に居たらあまり感じなかった事を、ここタイに住むようになって考えるようになった。というのも、全てがそうだとは言わないが、比較的無愛想な態度や自分の事を優先させている接客業の人が多い。「微笑みの国」ではなかったのか?! とツッコミたくなることも多々ある。またはお店側のミスや期限を守らなかった場合の満面の笑顔での「マイペンライ」には、「その台詞を言うのはこっちだ!」と思った事も…。
だが逆に、何度か日本人客がタイ人従業員に対して、横柄な態度を取っていたり、「お客様然と扱え」的な態度を目にした際に嫌な気分になった事もある。タイに来ている日本人は、例えば社長さんとか、雇い主の立場で、タイの人を教育しながらお仕事を提供する側の人も多いから、威圧的だったり、その立場でタイ人を見ているのかもしれない。だが、客と従業員はどちらが上でも下でもなく、お互いリスペクトすべき人と人である。サービスは提供されて当たり前だ、というような態度を取る人が、特に無愛想な態度を取られている事の方が多いのも良く目にしてきた。結局は自分の態度の合わせ鏡のようなものなのではないだろうか?!
私はタイで、無愛想な従業員が微笑むまで、様々なアプローチをし、何度も勝利してきた(笑)。大抵、こちらから微笑みかければ、相手も微笑み返してくれるのだ。たまに、手強い相手もいる事はいるが、「サービスを受けさせてもらう」というこちら側の感謝の姿勢と、こちら側に笑顔があれば、相手は良いサービスと、いい笑顔を返してくれるものだ。
働く人は機械じゃない、機嫌の良し悪しもあるだろう。タイに見る自由すぎる接客業のやり方は、自分の心を殺したまま言葉や上っ面だけマニュアル通りな対応より、ずっと人間らしいと思ったりもする。
特にここは日本ではない。「微笑みの国」なんだから、微笑まれて当然、というお客様には特に先に教えておきたい事だ。
Published · Updated
by hiroko 「結婚・離婚アドバイザー」
来タイ4年目! ライター、ラジオDJ、普段着物愛好家。着物をもっと身近なものにをモットーに、バンコクFM放送局J-channel、毎週月曜日Morning Kissには着物やゆかたで出演中。リクエスト、メッセージなど大歓迎です
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