「秋の学芸会で、ピアノの伴奏に挑戦する」。ある日、娘がそう言うのを聞いて、正直とても驚きました。
というのも、彼女がピアノを弾かなくなって、もう2年が経っていたからです。思わず「ピアノ習っていないから、伴奏は難しいでしょう」と言いかけた言葉を、ぐっと飲み込みました。だって最近は自宅のピアノに触れることすら、ほとんどなかったのです。
それなのに、いきなり学芸会の伴奏に立候補するとは・・・。心配する私を横目に、娘は「やってみたかったの!」と目を輝かせていました。
そこからの2週間、私は娘の姿から多くのことを受け取りました。
その日を境に、娘は毎日ピアノの練習に励み始めました。久しぶりの鍵盤に戸惑い、指もぎこちなかったけれど、オーディションまでの間、朝も夕方もピアノに向かい続けました。夜は「もう遅いから」と声をかけなければ、きっと弾き続けていたと思います。
そして気がつけば、音は日ごとに変わっていきました。以前のように「練「習しなさい」と促さなくても、自らの意思でピアノに向かう姿に、私は静かに感動していました。
さらに2週間が経つ頃には、娘の指先はますます滑らかに動き、音にはのびやかさと自信が宿っていました。その変化は、私の想像をはるかに超えて、小さな伴奏者の姿になっていたのです。
その姿を見て、「できるからやる」「スキルがあるからやる」のではなく、「なりたい自分になるために、どうするか」を考え、行動すること。キャリアにも通じる、理想への向き合い方を感じとりました。
スキルや実績よりも、「なりたい」という純粋な気持ちが、人を動かし、成長を加速させていくのだと思います。そしてその姿は、まわりの思う“常識”をやがて超え、理想を叶えていくのでしょう。
まだ子どもっぽさの残る指先で、一生懸命に奏でる音色が、改めて大切なことを思い出させてくれました。
さあ、あなたは「なりたい自分になるために」どんな一歩を踏み出しますか?