コラム ワールド通信 歯科医師としてできること

ベトナム

私は2008年からカンボジアで、子供たちの歯を虫歯から守る“虫歯の予防”活動を行っている歯科医師です。現在はカンボジアとベトナムで、年に4回の活動を続けています。最近10年ほどで日本の子供たちの虫歯はかなり減りました。これは乳幼児健診や学校健診、小学校での歯磨き指導が十分に行き渡ったためです。長年の教育のおかげで、子供たちの虫歯が体に及ぼす悪影響や、食生活の重要性などの知識が浸透し、毎日の歯磨きが習慣になったのです。しかし、アジアの他の国々では歯磨きの習慣や歯に関する知識が不足しているために、虫歯で困っている子供たちがたくさんいます。ある時、カンボジアの子供たちの歯の現状を知り、歯科医師としてできることを伝えていきたいと、活動をはじめました。
現在、トンレサップ湖の水上村の子供たちと、タイとの国境近く、地雷原の村の子供たちを健診、指導しています。この地域に住む人々は、産業もなく大変貧しい生活をしています。5歳を過ぎた子供たちは、田んぼや牛の世話、魚釣りや家の手伝いをして、学校にいくこともままなりませんでしたが、5年ほど前から、日本からの支援でようやく小学校が出来、村の子供たちが徐々に通学できるようになりました。この学校の子供たちの虫歯率は90%以上です。学校の中にジュースや駄菓子の売店ができ、これらが朝ごはんがわりです。だらだらと甘いものを食べ、歯磨きをしない習慣のため、乳歯はほとんど虫歯になってしまいました。日本からの支援で少しずつ豊かになってきた村は、歯の知識より先にジュースやお菓子が入ってきてしまい、子供たちの健康をおびやかしていました。
歯科や病院もない村で大切なことは病気の予防です。予防するためには体の健康に関する知識が必要。教育は一番たいせつな支援なのです。
歯磨きを習慣化して虫歯を減らし、元気な体を作り、学校に通ってほしい。中学や高校へ進学できる子供が増えて、よりよい仕事に就くことができれば村の生活も変わってきます。習慣化は数回の訪問では不可能。次世代の子供たちのことも視野に入れ、活動の継続が重要です。虫歯のない真っ白な歯で笑う子供たち。素敵な笑顔に会うために、私はこれからも活動を続けたいと思います。

関連記事...

バックナンバー情報..