Vol.Vol.58-1
ナント市の生活
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19歳の時に単身イギリスへ。ウェールズやロンドンの語学学校で英語を学び、現在の夫であるフランス人と出会う。ロンドンにある大学で国際政治学、経営学を学ぶ。パリに1年留学経験もあり。2010年に結婚。翌年、夫の転職によりフランスのナント市に引っ越す。2013年に長男を出産。読書と北欧食器、北欧雑貨に夢中。
フランス・ナント
私が今の住まいであるフランスのナント市にやってきたのは2年前のことです。突然夫の赴任が決まり、ばたばたと引越し準備やビザ、さらに想像も付かないナントの情報をかき集めるのに大忙しでした。手持ちのガイドブックでは情報が少なく、頼りはインターネットでした。よく目にしたキーワードでは国内で6番目に大きい街で、メディアの調査では「フランス人がもっとも住みたい街」や「住みやすい街」として何度も取り上げられている、ということ。そんなわけで、私の中でのナントへの期待は高まっていました。ところが着いて早々がっかり。移動はトラム3本とバスで済んでしまうような小さな街。日常生活では徒歩で用が足ります。今までロンドンやパリのような大都市で生活をしていたので、正直初めは退屈でした。
評判がいいナント市ですが、フランス人にとって住みたい街の条件は何でしょうか。実はフランス人は大きな町をあまり好まないそうです。日本人の憧れのパリは、どうやら不人気。というのも街中は人に溢れ、通勤には時間が掛かり、観光スポットはたくさんある一方でスポーツセンターや図書館のような公共施設が少ない。とにかく移動に時間もお金もかかるのがパリだそうです。というわけで人気がある街の条件は「コンパクトさ」だそうです。移動が楽で、週末には家族でのんびりできるような公園や趣味に没頭できるような公共施設が充実していて、生活がしやすい環境であること。
ナント市では移動は市内を走るトラム、バスの他にナント市が運営する貸出自転車サービスを利用する人が多く、街の至る所にある貸出スポットで乗り降りができます(写真参照)。市内には自転車専用車線があり、環境にもやさしい上に経済的です。パリの様に観光スポットは少ないですが、荒廃していた旧造船所跡地は、2002年に市が再開発プロジェクトとして芸術家集団の援助をし始め、現在も進化しつづけています。そのパフォーマンス集団「レ・マシン・ド・リル」が生み出した巨大な機械仕掛けの象は街のシンボルとして皆に愛されています。ナントには大きな公園がいくつもあり、散歩やピクニックをする家族をよく見かけます。また週末にはちょっと遠出をして海へ行くこともできます。
住み始めてから2年経った今、私が感じるナント市は「大きくもないけど小さくもなく丁度いい街」です。午前は青空市場へ買出しに行き、午後は息子を連れてお友達とピクニックへ。そんな生活もすっかり板についてきました。ナント市が住みやすい町に選ばれた理由が分かってきた今日この頃です。