「春」といえば、希望に満ちた季節。しかし海外在住者にとっては、どこか心が落ち着かない季節でもあります。異動や転勤、引っ越し、子どもの進級。自分の意思とは関係なく、生活の前提ががらりと変わることも少なくありません。
ついこの前まで、「ここで頑張っていこう」と思っていたのに、突然別の場所へ。整えていた生活や描いていた計画が、ふっと白紙に戻る感覚になることもあります。
私も3年前にマレーシアに移住した時、また振り出しに戻ったような感覚が芽生えたことは忘れられません。そういう時「これも人生の一部」と頭で整理するものの、気持ちが追いつかないこともありました。
でも、あとから振り返ると、あの時期があったからこそ、出会えた人や見えた景色が確かにあったと感じています。時に揺らぎながら、不安を抱えながらも、それでも「未来を向いて生きる」と心が決まっているのは、あの経験があるからです。
人間とは不思議なもので、“順調だった時期”よりも、“思い通りにいかなかった時間”のほうが、記憶に残っていたりします。それは、そこで感じた迷いや戸惑いの中に、私らしさの輪郭がにじみ出るからかもしれません。
だから、もし今あなたが思いがけない変化の中にいるなら、無理に納得したり、その転機にポジティブな意味を持たせようとしなくても大丈夫。「ちょっと落ち着かない春だな」と、そのまま感じていいのです。
それでもきっと近い未来には「あの転機も悪くなかったな」と思える日が来るのではないでしょうか。私がそうだったように、それはあなたにもベストなタイミングで必ず訪れます。
やさしい春風の国もあれば、じりじりと暑さに包まれる春の国もあります。どんな風が吹く場所にいても、新しい季節を私たちらしく歩んでいきましょう。