元BANGKOK駐妻通信

第10回

“マイペンライ"なんと便利な言葉。タイで暮らし始めた頃は、この言葉がいちいち気に障りました。その一言ですべてを丸めて解決してしまうタイ人の感覚に、数えきれないほど面食らったのを覚えています。

 

2006年にバンコクに住み始め、子供を2人をサミティヴェート病院で出産し、その後、フィリピンやミャンマーへ転勤になってからも、病院通いや食料の買い出しで度々バンコクを訪れ、約10年間タイを身近な国として生活してきました。バンコクの進化っぷりは年々どころじゃなく、月を追うごとに何かが新たに出現し、何かがなくなっていくの繰り返し。「バンコク生活」のスタイルも少しづつ変化していったように感じます。

 

今年13歳になる長男はバンコクで生まれ、ブーンチューというタイネームをタイの友人に命名して貰い、4歳までタイで育ちました。母親の私が言うのもなんですが“いいヤツ"です。臆することなく人とすぐ仲良くなれ、どんな立場にある人にでも寄り添える優しさがあり、友達にいたらいいな、な中学生(←親バカ発言をお許しください)。

 

確信しているのは、彼のパーソナルはタイ人に育んでもらったということ。レストランで厨房に連れ去られ、街中で勝手にぶちゅーとされ、アヤさんやモーターサイの兄さんに抱っこされる。電車やバスやタクシーを利用するたびにコミュニケーションが生まれ、人情に触れて、それが当然の感覚として身についたのだと思っています。いや、当時は複雑ですよ、母は。衛生面とか誘拐疑惑とか、警戒していましたもの。でも、私が学校に通わずにタイ語を習得できたのは、そういった日常生活でたどたどしく会話を繰り返したからだと思います。

 

昨今のバンコクは、東京を凌ぐ勢いで「イケてる街」になり、日本ではちょい手が出ないような「イケてる生活」が目の前にあります。けれども、観光客と在住者の違いは、どれだけ本当のタイを知っているのか、語れるのか、親しいタイの友人がいるのか、心からタイをリスペクトできるのか、に尽きる気がします。何を得るのかはその人次第、今タイに暮らす皆さんの“経験"が、後に実りあるものとなる“タイ暮らし"になるよう願っています。

 

ちなみに私は、冒頭の“マイペンライ精神"が最強の授かりもの。この思考は日本社会でも万能薬。人に優しくなれ、小さいことは気にせず、自分を励ます言葉となっています。

田島美恵子

2006年からバンコク、その後マニラやヤンゴンを経て、2016年に本帰国。子供のみならず飼っている犬も猫もタイ生まれ。夫と子供3人+ペット10匹の大家族

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