コラム タイ野菜でべジフルライフ 第76回 ニーム(サダオ)

タイ野菜でべジフルライフ

第76回 ニーム(サダオ)

ニーム/インドセンダン
Neem
สะเดา(サダオ)

 2010年8月に「南国(タイ)の野菜たち」を出版してちょうど5年になります。出版社がもう増刷はしないとのことで、手元に残っているのもごくわずかとなってしまいました。タイに来られたばかりの方には、ぜひ手に取っていただきたい本なのにとても残念です。ちなみに日本の中古市場ではものすごい金額になっていて、なんだかフクザツな気分です。新しい本を出せないかと思案しておりますが、情けないことに日々の仕事に追われて、なかなか時間がとれません。でもこの5年の間にレストランを開いたり、野菜ソムリエとしていろいろ経験を積んできましたから、新たな情報や料理を紹介できると思うし、するべきだとは思っています。今年は年女で先日48歳になりましたが、50に向けてもう一頑張りしたいところです。
 
 正直、本の執筆は、寝る時間を削ってパソコンに向かいっぱなしの非常に苦しいものでした。そんな中で、周囲の人が知らないような新しい情報に出会った時の昂揚感が執筆の原動力になっていたようにも思います。滅多に口にしたことのない野菜やタイでしか入手できない野菜がものすごいパワーを秘めているとか、好きで食べている野菜がどうタイや日本に伝わって広まったかとか、調べれば調べるほど、「聞いて聞いて~!」と言いたくなる情報が出てくるのです。特に感動したのが、先月から書き始めた「ミラクル」と呼ばれる野菜たちで、そんな野菜がタイでは容易に手に入るということがなんだか誇らしいようにも思えました。今月は、その中からタイ語でサダオという人の名前のような野菜を紹介します。
 
 インド原産のセンダン科の常緑樹で、「奇跡の木」と呼ばれて世界中に注目されています。ミラクルと特に注目されるのは、人や農作物には害がなく、200種以上の害虫に対して強力な餓死能力を持つ成分を含んで農薬として利用できるという点です。乾燥高温地帯でも育ちやすく成長が早いため緑化効果があり、二酸化炭素の吸収力に優れているので環境改善や貧困対策に大きな役割を果たすと期待されています。
 
 さらにミラクルなのは、多くの薬効があり、葉も実も樹皮も利用することができる点です。インドでは、数千年も昔から「村の薬局」と呼ばれ民間の治療薬として使われてきました。糖尿病や生活習慣病予防にお茶やサプリもたくさん出ています。美容効果も高く、石鹸やシャンプー、オイルにもなっていますが、ダニやノミなどにも効くのでペットにもおすすめです。葉や小枝を穀物に入れて害虫を予防したり、タンスに入れて衣類を守ることもできます。
 
 タイでは、ニームの花芽や葉を食用としてきました。ものすごく苦いのですが、寄生虫や細菌の心配がある食事が多かったことから、中毒予防や虫下しの意味もあったのでしょう。焼きナマズとナムプリックと一緒に食べるのがポピュラーで屋台でよく見かけます。一度、ホテルでステーキのつけあわせに出てきてビックリしましたが、コッテリした肉と一緒だと苦さが気にならず、ステーキの罪悪感からも解放されました。口にする機会は少ないでしょうが、いろいろな製品を目にすることがあるかもしれません。こんなミラクルなものを何気なく野菜として食べているタイの食文化ってなんかスゴイですね。

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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